決裁者向けサマリー:送信可能件数とコスト
公式APIのみを利用する前提で、DM送信の技術的な上限件数と月額コストの目安を試算した。予算判断の前に、末尾の「重要なリスク」を先に確認すること。
送信できる件数(技術的上限)
| 期間 | 上限 |
|---|---|
| 15分あたり | 15件 |
| 24時間あたり | 1,440件(アカウント単位・アプリ単位とも同一上限) |
| 月換算(30日) | 約 43,200件/月 が技術的な天井 |
これ以上送るには送信元Xアカウントを複数用意する必要があるが、同一用途(例:営業DM)での複数アカウント運用は自動化ポリシーの「重複アカウント禁止」に抵触するリスクが高い(アカウント停止対象)。実務上の安全な上限は「1アカウントあたり1,440件/日」と考えるべき。
コスト試算(2026年2月開始の従量課金・Pay-Per-Use)
| 課金項目 | 単価 |
|---|---|
| DM送信(DM Interaction: Create) | $0.015 / 件 |
| 送信先ユーザーIDの解決(初見の相手に送る場合、User: Read) | $0.010 / 件 |
| 送信件数/月 | 既存ID宛のみ($0.015/件) | 新規相手ごとにID解決込み($0.025/件) |
|---|---|---|
| 1,000件 | $15(約¥2,400) | $25(約¥4,000) |
| 10,000件 | $150(約¥24,200) | $250(約¥40,300) |
| 上限43,200件(1,440件/日フル稼働) | $648(約¥104,300) | $1,080(約¥173,900) |
為替レートは1ドル≈161円(2026年7月3日時点、tradingeconomics.com)で参考換算。旧固定料金プラン(Basic $200/月・Pro $5,000/月)は2026年2月6日以降新規契約不可、従量課金が唯一の選択肢。クレジット購入に最低金額の縛りはなく、必要な分だけ都度チャージ可能。
重要なリスク(コスト以前に確認すべきこと)
スクレイピングや非公式APIでのDM送信代行($0.002/件などの安価な非公式サービス)は規約違反・アカウントBANのリスクが極めて高く、コスト比較の土俵に乗せるべきではない(詳細は下記「スクレイピング」セクション)。
結論
公式APIのみを使う前提であれば、10,000件規模なら約2.4万〜4.0万円、上限稼働(月43,200件)では約10.4万〜17.4万円という予算感になる。ただし予算承認の前に「送信対象は既存の同意済みユーザーか、それとも未承諾の新規開拓か」を確認するのが最優先——後者であれば費用の多寡に関わらず実施自体が規約違反となる。
要点(TL;DR)
- 許可 DM送信はX API v2 の公式エンドポイント(
POST /2/dm_conversations/with/:participant_id/messages等)経由でのみ自動化が認められる。OAuth 2.0 (PKCE) によるユーザーアクセストークンが必須。 - 制限 DM送信のレート制限はユーザー単位で15分あたり15件・24時間あたり1,440件。2026年2月6日以降、料金体系はサブスクリプション型から従量課金(Pay-Per-Use)に移行し、旧Free/Basic/Pro/Enterpriseは既存契約者のみ継続。
- 禁止 スクレイピング(公式APIを介さないブラウザ自動操作・非公開画面からのデータ取得)は利用規約で「X社の書面による事前許可なく禁止」と明記。違反時は100万投稿あたり15,000米ドルの違約金(liquidated damages)条項が適用され、実際に訴訟(X Corp. vs. Bright Data)にも発展している。
- 禁止 自動化ポリシー(Automation Rules, 2026年4月更新)は「Xウェブサイトをスクリプトで操作する等、API以外の自動化手法」を明示的に禁止し、違反はアカウント永久停止の対象となり得るとしている。
DM送信:公式APIの仕様
X API v2 は Direct Messages リソースとして、DMの送信・取得・削除を行う公式エンドポイント群を提供している。自動送信は必ずこの経路を通す必要がある。
エンドポイント一覧
| Method | Endpoint | 用途 |
|---|---|---|
| POST | /2/dm_conversations | 新規グループ会話の作成(初回メッセージ付き) |
| POST | /2/dm_conversations/with/:participant_id/messages | 1対1の新規または既存の会話にメッセージを送信 |
| POST | /2/dm_conversations/:dm_conversation_id/messages | 既存の会話(1対1・グループ)にメッセージを追加 |
| DELETE | /2/dm_events/:id | DMイベントの削除 |
| GET | /2/dm_events / /2/dm_events/:id | DMイベントの取得 |
| GET | /2/dm_conversations/with/:participant_id/dm_events | 特定相手との会話履歴取得 |
POST https://api.x.com/2/dm_conversations/with/1234567890/messages
Authorization: Bearer <OAuth 2.0 User Access Token>
Content-Type: application/json
{ "text": "こんにちは" }
認証
DM送信・取得には OAuth 2.0 Authorization Code with PKCE によって発行される「User Access Token」が必要(アプリ単体のBearer Tokenでは送信不可)。ユーザー本人の同意フローを経ずにDMを送信することはできない。
レート制限(X API v2 Rate Limits, 2026年時点)
| Method | Endpoint | Per App | Per User |
|---|---|---|---|
| GET | /2/dm_events | — | 15 / 15分 |
| GET | /2/dm_conversations/with/:id/dm_events | — | 15 / 15分 |
| POST | /2/dm_conversations | 1,440 / 24h | 15 / 15分, 1,440 / 24h |
| POST | /2/dm_conversations/with/:id/messages | 1,440 / 24h | 15 / 15分, 1,440 / 24h |
| POST | /2/dm_conversations/:id/messages | 1,440 / 24h | 15 / 15分, 1,440 / 24h |
| DELETE | /2/dm_events/:id | 4,000 / 24h | 300 / 15分, 1,500 / 24h |
出典: docs.x.com「X API Rate Limits」(Direct Messages セクション)。レスポンスヘッダー x-rate-limit-limit / x-rate-limit-remaining / x-rate-limit-reset で残数を確認できる。
料金体系
2026年2月6日、Xは従来のサブスクリプション型ティア(Free / Basic / Pro / Enterprise)を廃止し、従量課金(Pay-Per-Use)をデフォルトとする新モデルへ移行した。新規開発者はティア契約ができず、事前購入したクレジットを消費する方式になる。
Pay-Per-Use(現行デフォルト)
- 投稿作成: 約0.015ドル/件(リンク付きは約0.20ドル/件)
- 投稿読み取り: 約0.005ドル/件、月2,000,000件が上限
- 自社データ(自分のフォロワー等)の読み取りは割引レート
- 同一リソースは24時間の重複排除ウィンドウで二重課金されない
Legacyティア(既存契約者のみ継続)
- Free: 書き込み専用、読み取り不可
- Basic: 200ドル/月
- Pro: 5,000ドル/月
- Enterprise: 個別契約(数万ドル/月〜)
自動化ポリシー上の扱い(Automation Rules)
X公式の自動化ルール(2026年4月更新)は、ユーザーの投稿・エンゲージメントへの応答としてDMで自動返信するようなソリューションを許容例(Do)として挙げている。任意のアウトバウンド営業DMの自動送信を広く推奨しているわけではなく、以下は明確に禁止されている。
DMの自動送信を行う場合も、迷惑行為(スパム)や不要な情報提供の要求(個人情報を公開ポストで求める等)は禁止されており、必要最小限の情報のみをDM経由でやり取りするよう求められている。
スクレイピング:規約上・技術上の制限
X利用規約およびAutomation Rulesは、公式API以外の手段によるデータ取得を明確に禁止している。技術的な対策とあわせ、実際に訴訟にまで発展した事例もある。
利用規約(Terms of Service)
違約金条項(Liquidated Damages)
この条項は2024年後半に追加されたもので、実際に X Corp. が Bright Data 社をスクレイピング行為で提訴した訴訟(北カリフォルニア地区連邦地裁)において争点の一つになっている。Bright Data側は同条項がX APIの正規料金の約1,400倍に相当し、競争制限的だと反論している。
Automation Rulesにおける明文禁止
技術的な対抗措置
アクセス制限
- 2025年後半以降、ほとんどのプロフィールタイムライン・検索結果の閲覧にログイン(認証済みセッション)が必須
- robots.txt は大半のパスを disallow、許可パスはごく限定的
ボット検知
- ログイン画面・レート制限対象エンドポイントに Cloudflare Turnstile を導入
- ブラウザフィンガープリンティング・行動分析による非対話的な検知
結論
公式APIを介さないスクレイピングは、①利用規約違反(書面許可なしのアクセス)、②高額な違約金条項、③技術的ブロックによる実行可能性の低下、④実際の訴訟リスクという4つの観点から、業務利用には推奨できない。DM送信を含む自動化を行う場合は、X API v2 の公式エンドポイントとレート制限の範囲内で実装することが唯一の現実的な選択肢となる。
出典一覧(取得日: 2026年7月3日)
- X Developer Platform — Manage Direct Messages: IntroductionDM送信エンドポイント仕様
- X Developer Platform — X API Rate LimitsDM含む全エンドポイントのレート制限表
- X Developer Platform — X API pay-per-usage pricing and credits2026年2月6日移行の従量課金モデル
- X Developer Platform — About the X APIAPI v2概要・提供リソース一覧
- X Help Center — X's automation development rulesUpdated April 2026。DM自動化の可否・非APIスクレイピング禁止条項。同ページはCLI/curl経由では403を返すため、ブラウザ経由の取得内容に加え Web Archiveスナップショット(2026年6月22日取得)で内容を補助的に裏取り
- X — Terms of Serviceスクレイピング禁止条項・違約金(Liquidated Damages)条項。Web Archiveスナップショット2026年2月20日時点、および2026年4月10日版PDFで内容確認
- 米国北カリフォルニア地区連邦地裁 — X Corp. v. Bright Data 訴訟資料(CourtListener)違約金条項をめぐる訴訟の経緯
- California OAG — X Corp. Terms of Service Report (H1 2025)カリフォルニア州法に基づくToS変更履歴の公的報告